何が正義であるか、断定できる人などいないと思う。
個人にとっての正しさ、会社、国、人類、地球、宇宙等レベルで色々違うし、
時によっても異なるし、そもそも正しいって何か、
絶対的な正解などあるはずがない。
あるのはただ、その時代、その場所の人々の想いだ。
絶対的な正解は、神のみが知る。
だから、これが正しい、と価値観を断定してくる人は、
基本的に信頼に欠ける。特にそれが、学者や弁護士となると、憤りさえ覚える。
学者が真理を「追求」したり、研究を深めるのは、その専門性が社会に付加価値を
与えるからだろう。その深堀りで得られた何かが、使えるものになる可能性がある。
別にたくさん勉強して研究したからといって、学者に正義を語り、人々にその価値観を
強制する権利も正当性も何もない。合理的、科学的根拠に依って書いた論文だって、
サイエンスな部品であるだけで、価値観ではないはずだ。
弁護士もそうだ。むしろ個人的な政治的意見や偏見はなるべく排して、
フェアに、法にロジカルに関わり、適用してほしい、被疑者を弁護してほしいのに、
自分の勝手な思い入れで重刑を科されては困る。
阿川尚之という人が書いた、「憲法で読むアメリカ史」を読んでいる。
氏は1951年生まれの法学者で、NY州弁護士、大学教授だ。
アメリカの本質がよくわかる本だと思って拝読していたが、
ジョン・ブラウンという奴隷制反対論者が起こした事件に関する言及で、
ちょっと違和感を覚えた。というか残念に思った。
「(ジョン・ブラウンは)奴隷制度の強い反対論者ではあったものの、放浪者、馬どろぼう、
詐欺師などの履歴があり、数回破産するなど、まともな精神の持ち主ではなかったようである。
祖母はじめ、親戚にも精神異常者が多かった。」
放浪する人は精神異常者なのだろうか?
破産する人は精神異常者なのだろうか?民法はそんな前提だっただろうか?
彼の親戚はどういう理由で精神異常者なのだろうか?
精神異常者って何ですか?
歴史家は、自らの思い込みのストーリーを排して、確たる資料から
なるべく事実を積み上げるという、非常に厳しい仕事だと思う。
そしてそれこそエシックスが問われる仕事だと思う。
なぜなら、人々は彼の書いた二次資料を読むしかないからだ。
一次資料を全部自分で調べてるヒマがないから、効率化のために歴史家が存在するのだ。
それを、恣意的に「作る」ことは、重罪だと思う。
氏は、どこかの記事で、「トランプ大統領は困りもの」とも言っていた。何の論拠もなく。
氏のこういった軽率な「断定」には、歴史家や法学者としての資質・姿勢に、
疑問を持たざるを得ない。
そして、学者という肩書だけでそのような人の言説を鵜呑みにする人々にも、
警鐘を鳴らしたい。
氏は本当に色々なことをよく知っているが、少なくとも私の信頼感は落ちた。
あまり一般化するのは危険だと承知しつつ、どうしてもそう思うのは、
氏のそれは、やはり団塊世代の偉そうなステレオタイプなんだなと思う。
それは「高度成長」という「成功体験」を経験したため、自分の価値観を疑っていない、
という、それこそ「困った」症状なのかもしれない。
特に経済的に飽和した新しい時代、グローバルな時代にとっては。
まあ、世界的に同じようなことが起きてるみたいではあるのだが。。