「今日でクールビズは終わりだから、来週からは男性はスーツにネクタイ着用義務です」
という社内連絡にどうしても今回も違和感を感じた。
ので、ネクタイと題して色々考えてみたが、
この話は服装全般、ライフスタイル、歴史、価値観、宗教にまで
広がる、物凄く奥が深い話だと思った。
大体、ネクタイに限らずなぜスーツを着用する義務があるのか。
そのメリットって何なのか。本質は何か。
一概に無意味な趣味の上からの強制だとして100%反発するのは、どうやら違う。
例えば、スーツを毎日着ていればいいというのは、いちいちTPOを
考えなくて済むので、楽である。仕事の中身にその分のエネルギーを集中できる。
そういえば学生時代、私の高校は制服がなかったが、あった方が楽だなあ、
女子の制服好きだしなあ、と思っていたのをよく覚えている。
また、スーツのデザインは、悪くは無い。
少なくとも、人にデザインそのもので不快感を与えるものではない。
少なくとも、おじさんの伸びきったアディダスのTシャツとかよりは断然。
それはつまり、ファッションセンスがない人が、スーツという戦闘服を
着ることで、ビジネスの場面で不利にならない、という効果を発揮している。
ある意味、服装による機会の不平等を排除している。ある程度ね。
その「平等」は、メリットがある人と無い人がいるので100%の賛意は得られないが、
企業にとっては基本的にはウェルカムなはずだ。
服装が理由で仕事を落とすことが無くなるから。
もうひとつ、スーツのメリットとして、パリッと堅いデザイン性と関係するが、
プライベートと仕事を明確に分ける機能を果たす。
私は自分の痛風が発症したとき、家でパジャマのままなんとかPCで作業を
していたときがあったが、家でパジャマで仕事とは何とも気合いが入らず、
どうしても効率が悪いものである。
これは在宅仕事の是非にも関係するが、やっぱり仕事をする格好で
仕事をする場所に行く、ということが習慣化すると、
それはスイッチの切り替えが容易になるはずだ。
結果、仕事の効率化につながる。
この辺の理由で、企業にとっても、仕事をする個人にとっても、
スーツ着用はメリットのあるものとして普及したのではないだろうか。
では、どうして私は、
「今日でクールビズは終わりだから、来週からは男性はスーツにネクタイ着用義務です」
というアナウンスに、若干怒りにも近い不愉快な感情を持ったのか。
正直な心の中の反応を言うと、
「なんでおまえに服装を強制されなきゃならんのだクソが。
TPOぐらい自分で考えて判断するわボケ。」
と、
「なんで男性だけ強制で女性は自由なんだコラ。どこが男女平等なんじゃカス。」
このふたつだ。
服装の強制という意味では、スポーツのユニフォームや、
軍隊や警察等の一定の職種の人の制服がある。
スポーツのユニフォームは、敵味方の識別という機能と、吸汗・発汗性、動きやすさ、
防御性といった機能という実利が狙いで、副次的に一体感の醸成があると思う。
それは必要性にあまり疑問がない。
警察や軍隊も、識別性というのは必要な機能なのかもしれない。
敵味方は勿論、その職種であることそのものがみんなに分かりやすいことのメリット、
あとは階級が明確化することで上下関係がはっきりし、軍隊的な統率が取りやすい、
そういうことがあるだろう。これも必要性はありそうだ。
そういう前近代的な軍隊の必要性はとりあえず置いておくとして。
ではビジネスのユニフォームとしてスーツを強制する必要はあるのか。
上記のとおり、個人にも企業にもスーツを着るメリットはある。
しかし、この時代、「強制」まですべきものなのかどうか。
別にスーツ以外にも上記のメリットを達成できる服装はあるだろうし、
TPOを自分で考えれば良いだけの話だ。必ず毎日スーツでなければいけない、
なんて方が馬鹿げてる。
そうであるにも関わらず、ルールとしてスーツを強制する会社というのは、
よほど自分で判断ができないおバカさんが多い会社か、
軍隊的な規律を維持することを目的としてそのルールを徹底しているかの、
どちらかしか考えられない。
ダメ会社and/or超保守会社ということだ。
つまり私はそれが嫌いということか。
そして、コンプライアンスだとか、男女平等だとか言ってる割には、
まったく平等もクソも考慮していないそのアナウンスは、理解しがたい。
そもそも女性管理職比率を上げるとか、それ自体全く納得行ってないが、
その辺の日本人のセンスのなさ、というか何にも考えてないっぷりは、
引くほど中世的すぎる。
結論、現代日本の優秀な会社で、軍隊のような規律が大事な保守的業界でない限り、
スーツやネクタイを強制するのは、それにメリットがあるとはいえ、
時代遅れだということだろう。