神は全知全能らしい。
全知とは、全部知っているということらしい。
宇宙のすべてについて。過去も未来も。物質も精神も。
未来も全部わかっているらしい。
ではなぜ、愚かな人間の行いに怒り、呆れ、嘆き、
街を焼き尽くしたり、塔を破壊したり、大洪水を起こしてリセットしようとするのか。
全部ひっくるめて暇つぶし?
それはあるかもしれない。
タルムードの解説書に、こう書いてあった。
「あなたは、自分の子どもが生まれたとき、どう思ったか。」
「それはもう、嬉しかった。」
「しかし、その子もやがては死ぬではないか。それは悲しいことではないのか。」
「そうなったらその時悲しめばいい。嬉しい時は喜べばいい。」
なあるほど。
全知性で全てが決まっている、分かっているとして、
だったら何もする意味はないと絶望して死んだり、
そもそも生まれなかったり、無のままでいることは、
決定的に重大な視点を忘れていることに気づく。
感情であり、活動そのものの意味だ。
結局プラスマイナスゼロになったとしても、
色んなことが起こること、楽しいことも、苦しいことも、
良いことも悪いことも、あること自体が「幸せ」なのかもしれない。
それが神の狙いなのかもしれない。
生きてりゃいい、ただ生きればいい、死んじゃダメ、
というのは、そういう意味だ。
活動自体が幸せなら、予期しない死だけは否定される。
予定された子を産まない、ということも含めて。
そう考えると、自殺や中絶は、基本的に「悪いこと」になる。
どんな人生であっても、生きている人全てが「素晴らしい」ということになる。
これが神の全知性の意味だと思う。